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チベットの憤り脈々


〈民族の相克:中〉チベットの憤り脈々 2008年6月11日 asahi.com

 四川大地震の震源に近い省都・成都。諸葛孔明を祭る「武侯祠」周辺に多くのチベット族が住む人民解放軍ががれきの山から被災者を救うニュースを見ながら、土産物店の女性店員はため息をついた。「解放軍が懸命に努力しているのはわかる。でも、その彼らがチベット族の自由と命を奪っていると思うと、複雑な気持ちになる」

 チベット騒乱から1カ月後の4月15日午前4時。甘粛省にあるチベット仏教の名刹(めいさつ)に武装警官らが一斉に押し入った。抗議デモの参加者を摘発するためだった。

 僧たちによると、警官らは僧坊を残らず捜索し、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の写真を見つけると地面にたたきつけた。抵抗する僧を殴りつけ、約200人を拘束。容疑が晴れても、ダライ・ラマを批判する誓約書に10本の指紋を押印しないと釈放されないという。ある僧は「罪のない者にこんな扱いをするなんて絶対に間違い。永遠に憎しみが残るだけだ」と憤る。

 騒乱後、各地の寺院で一斉に「愛国主義教育」が始まった。一部の寺院では試験もある。合格の最低条件はダライ・ラマ批判の論文を書くことだという。「不合格でもいい。絶対に批判しない」。ある僧は言い切った。

 チベットの発展に力を注いできた共産党にとって、3月の騒乱は大きな誤算だったに違いない。

 「チベットは黄金期を迎えている」。チベット自治区政府のシャンパプンツォク主席は、騒乱後の会見で胸を張った。中央政府は06年開通の青海チベット鉄道など大規模開発や、医療・教育費の優遇策を進めた。同自治区の成長率は7年連続で12%を超える。

 ある省の職員で共産党員でもあるチベット族男性は「党の指導でチベットが発展したのは確か。でも、経済と武力で抑えられると思ったら見当違いだ。信仰に最高の価値を置くチベット族を、党は理解していない」と悔しがる。

 地震の救出作業で騒然としていた今月16日、震源から約300キロ離れた甘粛省甘南チベット族自治州マチュで軍に車を止められた。「刀や火薬を持ってないか」。地震の混乱に乗じた騒乱を警戒していた。目抜き通りの「団結路」はガラスが割られて黒こげになった商店やホテルがそのままだった。

 3月16日夕、数千人のチベット族が派出所や店を壊し始めた。「突然暴徒がガラスを割って入り込み、商品を奪った。無政府状態だった」と漢族の衣料品店主。

 怒りの矛先は漢族だけでなく、イスラム教系の少数民族、回族にも向けられた。マチュはかつてチベット族の町だったが、80年代から商売にたけた漢族や回族が急増して地元経済を握った。チベット族の自営業者は「回族は粗悪品を売りつけ、偽札をつかませるから嫌われている」と話す。一方、薬局が襲われた回族の拝占丈さん(50)は「我々は遠方から商品を流通させ、チベット族から畜産物を買い取って収入をもたらしている。我々を恨むのはお門違い」。

 「宗教も言葉も違い、何を考えているかわからない」(回族住民)という壁が、少数民族同士にもあつれきを生む。

 信仰と格差――。「団結路」の名とは裏腹に、民族間の埋めようのない深い溝が横たわっていた。

 ■地震で抗議自粛

 チベット難民約1万8千人が住むネパール。首都カトマンズの中国大使館領事部前では、3月の騒乱以来、難民の抗議デモがほぼ毎日続いていた。しかし大地震後、ぴたりと止まった。活動家の一人は「これだけの災害が起きた以上、自粛するしかない。運動にはダメージだが……」と話す。

 隣国インドのダラムサラにある亡命政府は今月15日、世界各地の亡命チベット人に対し、抗議活動を当面停止するよう呼びかけた。

 ただ、「完全な独立」を掲げ、抗議活動を主導してきた亡命チベット人の最大組織「チベット青年会議」の幹部は言う。「地震後はチベット弾圧の報道がほとんど止まった。でも今もチベット本土では何人もの僧が逮捕されている。人災と天災は区別すべきだ。抗議活動は必ず再開する」 (西村大輔、武石英史郎)

 ■ウイグルも似た境遇

 鉄のドアを破りそうなぐらいの力でたたく音で目が覚めた。

 「かぎを開けろ」。のぞき口から外を見ると、体格のいい3人の男が立っていた。

 北京市中心部にある30代のウイグル族女性のマンションに5月の深夜、警察当局が家宅捜索に入った。容疑も告げないまま、部屋に押し入った。小学生のときから書きためている日記やアドレス帳を次々と段ボール箱に詰め込む。「これが法治国家のすることですか。私が何か悪いことをしたんですか」。立ち去ろうとする警官に食い下がると、一人が答えた。

 「お前がウイグル族だからだ」


 先祖代々の土地や文化を持ち、宗教上の信仰心も厚い――。チベット族と似た境遇にあるのが「シルクロードの民」ウイグル族だ。中国にとって、チベットと同様、独立問題で揺れるアキレス腱(けん)だ。

 中国当局は3月9日、ウイグル独立派によるテロ未遂事件があったと公表。北京を中心に取り締まりを強めている。政府関係者は「ダライ・ラマのようなリーダーが不在で、破壊行動に出るウイグル族の方がはるかに危険。チベット騒乱の波及が心配だ」と話す。

 弾圧を恐れ、海外に逃れる人も多い。2歳の時に新疆ウイグル自治区から隣国キルギスに逃れた男性(54)は、「ここでは中国の国内問題にかかわると違法になり、キルギスでの権利が奪われる」と話す。中国とキルギスは蜜月関係にある。以前、首都ビシケクで独立運動への支援を訴えたウイグル族が地元警察に逮捕された。近所には同じ境遇の47家族が暮らすが、独立運動の話はほとんど出ない。

 「中国の影響力は大きい。ウイグル族だけでは力が足りない」(峯村健司、茂木克信)

◆キーワード
 <ウイグル族> トルコ系イスラム教徒で、新疆ウイグル自治区を中心に、中国国内に約840万人。中央アジアで数々の独立王朝を樹立した後、18世紀に清の支配下に入った。1933年と44年に「東トルキスタン」として独立宣言したことがある。亡命者組織として「世界ウイグル会議」(本部・ドイツ)がある。




チベット族、という表記に悪意を感じます。
チベット人です。最初から、中国の一地方であったのではないのです。

暴動は、チベット人が犯人だ、と言い切っているようですが
偽装されてる可能性については一切触れていません。

悪意を感じます。

そして、チベット青年会議を引き合いに出すのも


ダライラマ法王と、意見の違いがありました
考慮されてないでしょうね。


ちなみに、中国共産党に機関紙である
人民日報では、チベット青年会議は、テロリスト認定です。

中国にとっての意見を述べる、人民日報の視点で
朝日さんは、お書きになってるのですね、わかります。
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